このページではシミュレーター上の Raspberry Pi マウスを操作するためのコンポーネントの作成手順を説明します。
まずは資料をダウンロードしてください。
ZIPファイルは Lhaplus 等で展開してください。
インターネットに接続できない環境で講習会を実施している場合がありますので、その場合は配布のUSBメモリーに入れてあります。
シミュレーターは Open Dynamics Engine(ODE) という物理演算エンジンと ODE 付属の描画ライブラリ(drawstuff)を使用して開発しています。 OpenGL が動作すれば動くので、大抵の環境で動作するはずです。
以下の Raspberry Piマウス というロボットのシミュレーションができます。
シミュレーター上の Raspberry Pi マウスの動力学計算、接触応答だけではなく、距離センサーのデータも現実のロボットに近い値を再現するようにしています。
RaspberryPiMouseSimulator コンポーネントと接続してシミュレーター上のロボットを操作するためのコンポーネントです。
GUI(スライダー)によりシミュレーター上のロボットの操作を行い、センサー値が一定以上の時には自動的に停止するコンポーネントの作成を行います。
作成手順は以下の通りです。
以下の環境を想定しています。
RobotController は目標速度を出力するアウトポート、センサー値を入力するインポート、目標速度や停止するセンサー値を設定するコンフィギュレーションパラメーターを持っています。
コンポーネント名称 | RobotController |
InPort | |
ポート名 | in |
型 | TimedShortSeq |
説明 | センサー値 |
OutPort | |
ポート名 | out |
型 | TimedVelocity2D |
説明 | 目標速度 |
Configuration | |
パラメーター名 | speed_x |
型 | double |
デフォルト値 | 0.0 |
制約 | -1.5<x<1.5 |
Widget | slider |
Step | 0.01 |
説明 | 直進速度の設定 |
Configuration | |
パラメーター名 | speed_r |
型 | double |
デフォルト値 | 0.0 |
制約 | -2.0<x<2.0 |
Widget | slider |
Step | 0.01 |
説明 | 回転速度の設定 |
Configuration | |
パラメーター名 | stop_d |
型 | int |
デフォルト値 | 30 |
説明 | 停止するセンサー値の設定 |
2次元平面上の移動ロボットの移動速度を格納するデータ型である TimedVelocity2D 型を使用します。
struct Velocity2D { /// Velocity along the x axis in metres per second. double vx; /// Velocity along the y axis in metres per second. double vy; /// Yaw velocity in radians per second. double va; }; struct TimedVelocity2D { Time tm; Velocity2D data; };
このデータ型にはX軸方向の速度vx、Y軸方向の速度vy、Z軸周りの回転速度vaが格納できます。
vx、vy、vaはロボット中心座標系での速度を表しています。
Raspberry Pi マウスのように2個の車輪が左右に取り付けられているロボットの場合、横滑りしないと仮定するとvyは0になります。
直進速度vx、回転速度vaを指定することでロボットの操作を行います。
Raspberry Pi マウスの距離センサーのデータは物体との距離が近づくほど大きな値を出力するようになっています。
デバイスファイルから取得した数値 | 実際の距離[m] |
1394 | 0.01 |
792 | 0.02 |
525 | 0.03 |
373 | 0.04 |
299 | 0.05 |
260 | 0.06 |
222 | 0.07 |
181 | 0.08 |
135 | 0.09 |
100 | 0.10 |
81 | 0.15 |
36 | 0.20 |
17 | 0.25 |
16 | 0.30 |
シミュレーターではこの値を再現して出力しています。 RobotController コンポーネントではこの値が一定以上の時に自動的に停止する処理を実装します。
RobotController コンポーネントのひな型コードの生成は、RTCBuilder を用いて行います。
Eclipse では、各種作業を行うフォルダーを「ワークスペース」(Work Space)とよび、原則としてすべての生成物はこのフォルダーの下に保存されます。 ワークスペースはアクセスできるフォルダーであれば、どこに作っても構いませんが、このチュートリアルでは以下のワークスペースを仮定します。
まずは Eclipse を起動します。 Windows 8.1の場合は「スタート」>「アプリビュー(右下矢印)」>「OpenRTM-aist 1.1.2」>「OpenRTP」をクリックすると起動できます。
最初にワークスペースの場所を尋ねられますので、上記のワークスペースを指定してください。
すると、以下のようなWelcomeページが表示されます。
Welcomeページはいまは必要ないので左上の「×」ボタンをクリックして閉じてください。
右上の [Open Perspective] ボタンをクリックしてください。
「RTC Builder」を選択することで、RTCBuilder が起動します。メニューバーに「カナヅチとRT」の RTCBuilder のアイコンが表示されます。
RobotController コンポーネントを作成するために、RTC Builder で新規プロジェクトを作成する必要があります。
左上の [Open New RTCBuilder Editor] のアイコンをクリックしてください。
「プロジェクト名」欄に作成するプロジェクト名 (ここでは RobotController) を入力して [終了] ボタンをクリックします。
指定した名称のプロジェクトが生成され、パッケージエクスプローラ内に追加されます。
生成したプロジェクト内には、デフォルト値が設定された RTC プロファイル XML(RTC.xml) が自動的に生成されます。
RTC.xml が生成された時点で、このプロジェクトに関連付けられているワークスペースとして RTCBuilder のエディタが開くはずです。 もし起動しない場合はパッケージエクスプローラーの RTC.xml をダブルクリックしてください。
まず、いちばん左の「基本」タブを選択し、基本情報を入力します。先ほど決めた RobotController コンポーネントの仕様(名前)の他に、概要やバージョン等を入力してください。 ラベルが赤字の項目は必須項目です。その他はデフォルトで構いません。
次に、「アクティビティ」タブを選択し、使用するアクションコールバックを指定します。
RobotController コンポーネントでは、onActivated()、onDeactivated()、onExecute() コールバックを使用します。下図のように①の onAtivated をクリック後に②のラジオボタンにて [ON] にチェックを入れます。 onDeactivated、onExecute についても同様の手順を行います。
さらに、「データポート」タブを選択し、データポートの情報を入力します。 先ほど決めた仕様を元に以下のように入力します。なお、変数名や表示位置はオプションで、そのままで結構です。
次に、「コンフィギュレーション」タブを選択し、先ほど決めた仕様を元に、Configuration の情報を入力します。 制約条件および Widget とは、RTSystemEditor でコンポーネントのコンフィギュレーションパラメーターを表示する際に、スライダー、スピンボタン、ラジオボタンなど、GUI で値の変更を行うためのものです。
直進速度 speed_x、回転速度 speed_r はスライダーのより操作できるようにします。
次に、「言語・環境」タブを選択し、プログラミング言語を選択します。 ここでは、Python(言語)を選択します。なお、言語・環境はデフォルト等が設定されておらず、指定し忘れるとコード生成時にエラーになりますので、必ず言語の指定を行うようにしてください。
最後に、「基本」タブにあ [コード生成] ボタンをクリックし、コンポーネントのひな型コードを生成します。
※ 生成されるコード群は、eclipse 起動時に指定したワークスペースフォルダーの中に生成されます。現在のワークスペースは、[ファイル] > [ワークスペースの切り替え..]で確認することができます。
<ワークスペースディレクトリー>/RobotController/RobotController.pyをPython用エディタで開いて編集してください。 Pythonに標準で付属しているIDLEを使う場合は、ファイルを右クリックしてEdit with IDLEをクリックするとファイルを開きます。
OpenRTM-aist 1.1.2のRTC Builderを使用している場合は、変数初期化部分を修正する必要があります。(OpenRTM-aist 1.2.0では修正される予定です)
まずは、init関数のself._d_in変数初期化部分を修正してください。
def __init__(self, manager): OpenRTM_aist.DataFlowComponentBase.__init__(self, manager) #in_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedShortSeq) - 4) / 2) ←削除 #self._d_in = RTC.TimedShortSeq(*in_arg) ←削除 #以下の行を追加 self._d_in = RTC.TimedShortSeq(RTC.Time(0,0),[])
次にself._d_out 変数初期化部分を修正してください。
#out_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedVelocity2D) - 4) / 2) ←削除 #self._d_out = RTC.TimedVelocity2D(*out_arg) ←削除 #以下の行を追加 self._d_out = RTC.TimedVelocity2D(RTC.Time(0,0),RTC.Velocity2D(0.0,0.0,0.0))
これで完了です。
RobotController コンポーネントでは、コンフィギュレーションパラメーター(speed_x、speed_y)をスライダーで操作しその値を目標速度としてアウトポート(out)から出力します。 インポート(in) から入力された値を変数に格納して、その値が一定以上の場合は停止するようにします。
onActivated()、onExecute()、onDeactivated() での処理内容を下図に示します。
下記のように、onActivated()、onDeactivated()、onExecute() を実装します。
def onActivated(self, ec_id): #センサー値初期化 self.sensor_data = [0,0,0,0] return RTC.RTC_OK
def onDeactivated(self, ec_id): #ロボットを停止する self._d_out.data.vx = 0 self._d_out.data.va = 0 self._outOut.write() return RTC.RTC_OK
def onExecute(self, ec_id): #入力データの存在確認 if self._inIn.isNew(): data = self._inIn.read() #この時点で入力データがm_inに格納される #入力データを別変数に格納 self.sensor_data = data.data[:] #前進するときのみ停止するかを判定 if self._speed_x[0] > 0: for d in self.sensor_data: #センサ値が設定値以上か判定 if d > self._stop_d[0]: #センサ値が設定値以上の場合は停止 self._d_out.data.vx = 0 self._d_out.data.va = 0 self._outOut.write() return RTC.RTC_OK #設定値以上の値のセンサが無い場合はコンフィギュレーションパラメータの値で操作 self._d_out.data.vx = self._speed_x[0] self._d_out.data.va = self._speed_r[0] self._outOut.write() return RTC.RTC_OK
作成した RobotController をシミュレーターコンポーネントと接続して動作確認を行います。
以下より RaspberryPiMouseSimulator コンポーネントをダウンロードしてください。
ZIPファイルは Lhaplus 等で展開してください。
インターネットに接続できない環境で講習会を実施している場合がありますので、その場合は配布のUSBメモリーに入れてあります。
コンポーネントの参照を登録するためのネームサービスを起動します。
「スタート」>「アプリビュー(右下矢印)」>「OpenRTM-aist 1.1.2」の順に辿り、「Start Naming Service」をクリックしてください。
※ 「Start Naming Service」をクリックしても omniNames が起動されない場合は、フルコンピュータ名が14文字以内に設定されているかを確認してください。
RobotController コンポーネントを起動します。
RobotControllerComp.pyファイルをダブルクリックして実行してください。
このコンポーネントは先ほどダウンロードしたファイル(RTM_Tutorial_2017.zip)を展開したフォルダーの EXE/RaspberryPiMouseSimulatorComp.exe を実行すると起動します。
下図のように、RTSystemEditor にて RobotController コンポーネント、RaspberryPiMouseSimulator コンポーネントを接続します。
RTSystemEditor の上部にあります [All Activate] というアイコンをクリックし、全てのコンポーネントをアクティブ化します。 正常にアクティベートされた場合、下図のように黄緑色でコンポーネントが表示されます。
下図のようにコンフィギュレーションビューの [編集] ボタンからコンフィギュレーションを変更することができます。
講習会で Raspberry Pi マウス実機を用意している場合は実機での動作確認が可能です。
手順は以下の通りです。
Raspberry PiマウスにはRaspberry Piの電源スイッチとモーターの電源スイッチの2つがあります。
内側の電源スイッチをオンにするとRaspberry Piが起動します。
Raspberry Piの電源を切る場合は、電源スイッチから直接オフにはしないようにしてください。 3つ並んだボタンの中央のボタンを数秒押すとシャットダウンが始まります。 10秒程度でRaspbianのシャットダウンが終了するため、その後に電源スイッチをオフにしてください。
アクセスポイントへの接続方法は以下のページを参考にしてください。
SSID、パスワードは Rasoberry Pi マウスに貼り付けたシールに記載してあります。
まず右下のネットワークアイコンをクリックしてください。
OpenRTPを終了するには右上の×を押して終了してください。システムダイアグラムを保存するかどうか聞かれますが、Don't Saveを選択してください。
OpenRTPをデスクトップのショートカットをダブルクリックして起動してください。
RT System Editor上でネームサーバーを再起動するには「ネームサービスを起動」ボタンを再度クリックします。
※この作業は以下のLiDAR付Raspberry Piマウスで必要な作業です。LiDAR無しのRaspberry Piマウスの場合は次の作業へ進んでください。
Edge、Chrome、Firefox等のWEBブラウザで192.168.11.1のアドレスにアクセスしてください。
するとRaspberryPiMouse with OpenRTM-aistの画面が表示されます。
まずはネームサーバーを起動するため、Start NameServerボタンを押してください。
RaspberryPiMouseRTCのStartを押してください。
元の画面に戻らない場合はBack to the top page.をクリックしてください。
これで完了です。
続いてRTシステムエディタの [ネームサーバー追加] ボタンで 192.168.11.1 を追加してください。
すると以下の2つの RTC が見えるようになります。
RaspberryPiMouseRTC は名城大学のロボットシステムデザイン研究室で開発されているラズパイマウス制御用の RTコンポーネントです。
RTシステムエディタで RaspberryPiMouseRTC、RobotController コンポーネントを以下のように接続します。
動作の前に、モーターの電源スイッチをオンにしてください。 モーターの電源はこまめに切るようにしてください。
そして RTC をアクティブ化すると Raspberry Pi マウスの操作ができるようになります。