チュートリアル(AIツール、第3部、「推論結果の検証」の実習)

目的

RTM(OpenRTM-aist)を利用し、人工知能技術を応用したロボットシステムを構築します.
深層学習による画像認識を利用した移動ロボット制御システムを作成することで、実際の研究、開発へのアプリケーション応用について学びます.

本チュートリアルで構築するRTシステム

カメラ入力により物体を認識し,認識した物体に応じたロボット速度制御を行うシステムを構築します.
実習時間の都合上,学習済みのモデルから推論するRTコンポーネント(ImageToObjectPrediction)を再利用します.
物体認識にはCNNでImageNetを事前に学習したモデルを使います(chainer + GooLeNet で実装してあります).

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NameToVelocityコンポーネントの作成

作成するRTコンポーネント

「NameToVelocity」というコンポーネントを作成します.
Webカメラで検知した物体の名前を入力とし、入力された名前によって速度を変更することで、ロボットを操作するコンポーネントです.

作成手順と開発環境

下記URLの「作成手順」「開発環境の確認」を参照ください
http://openrtm.org/openrtm/ja/node/6386

コンポーネントの仕様

NameToVelocityは「Webカメラで検知した物体の名前を入力とするインポート」と「ロボットの移動速度を出力するアウトポート」をそれぞれひとつずつ持ちます.

コンポーネント名 ポート名 型名 説明
NameToVelocity in TimedString Webカメラで検知した物体の名前を入力とするポート
out TimedVelocity2D ロボットの移動速度を出力とするポート

TimedVelocity2D型について

「TimedVelocity2Dについて」を参照ください
http://openrtm.org/openrtm/ja/node/6386

NameToVelocityコンポーネントのひな形の作成

NameToVelocityコンポーネントのひな形の作成は、「RTC Builder」を用いて行います.
まずは Eclipse を起動します.
Windows 8.1の場合は「スタート」>「アプリビュー(右下矢印)」>「OpenRTM-aist 1.1.2」>「OpenRTP」をクリックすると起動できます.
ワークスペースの場所を決める必要があるので指定してください.

tutorial_jsai_3_1.png

指定すると、下記の画面が表示されますが、Welcomeページは必要ないので閉じてください.

tutorial_jsai_3_2.png

「RTC Builder」のパースペクティブを開きます.

tutorial_jsai_3_3.png
tutorial_jsai_3_4.png

新規プロジェクトの作成

NameToVelocityコンポーネントを作成するために、RTC Builderで新規プロジェクトを作成します. 左上の「Open New RTC Builder Editor」アイコンをクリックしてください.

tutorial_jsai_3_5.png

プロジェクト名を入力するウインドウが開くので、プロジェクト名を入力してください.
サンプルとして、ここでは「NameToVelocity」としています.

tutorial_jsai_3_6.png

指定したプロジェクトが生成され、パッケージエクスプローラ内に表示されます.
生成したプロジェクト内には、デフォルトで設定されたRTCプロファイルのXML(RTC.xml)が自動で生成されます.

tutorial_jsai_3_7.png

RTCプロファイルエディタが起動されない場合

RTC.xmlが生成された時点で、RTC Builderのエディタが開らくはずですが、開かれていない場合は、パッケージエクスプローラのRTC.xmlをダブルクリックしてください.

プロファイル情報入力とコード生成

まず、一番左にある「基本」タブを選択し、基本情報を入力します.
先ほど決めた「NameToVelocity」コンポーネントの仕様(名前)の他に、概要やバージョン等を入力してください.
ラベルが赤字の項目は必須項目なので何か入力してください、その他はデフォルトで構いません.

tutorial_jsai_3_8.png

次に、「アクティビティ」タブを選択し、使用するアクションコールバックを指定します.

NameToVelocityコンポーネントでは、onActivated()、onDeactivated()、onExecute() コールバックを使用することとします.
下図のように①の onAtivated をクリック後に②のラジオボタンにて [ON] にチェックを入れて有効化します.
選択されている関数名は赤字になり、有効化すると背景色が青色に変化します.
onDeactivated、onExecute についても同様の手順を実施して有効化してください.

各コールバック関数の概要やいつ呼ばれるかを知りたい方は下記を参照願います.
http://openrtm.org/openrtm/ja/content/rtc開発の流れ

tutorial_jsai_3_9.png

次に、「データポート」タブを選択し、データポートの情報を入力します.
先ほど決めた仕様を元に以下のように入力します.
なお、変数名や表示位置の設定はオプションのため、そのままで問題ありません.

  • InPort Profile:
    • ポート名: in
    • データ型: TimedString
  • OutPort Profile:
    • ポート名: out
    • データ型: TimedVelocity2D
      tutorial_jsai_3_10.png

次に、「言語・環境」タブを選択し、プログラミング言語を選択します. ここでは、Python(言語)を選択します.
なお、プログラミング言語の選択はデフォルトが設定されておらず、指定しない場合にはコード生成時にエラーになりますので、必ず言語の指定を行ってください.

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最後に、「基本」タブにある [コード生成] ボタンをクリックしてコンポーネントのひな形を作成します.

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ソースコードの編集

自動生成された「NameToVelocity.py」をエディタで開いて編集します.
NameToVelocity.pyは、(指定したワークスペースディレクトリ)¥NameToVelocityフォルダの中にあります.

Pythonがインストールされていれば、標準で付属しているIDLEというエディタが使えるため、 WindowsであればNameToVelocity.pyを右クリックして""Edit with IDLE""を選択すれば編集することができます.

tutorial_jsai_3_13.png

変数初期化部分の修正

OpenRTM-aist 1.1.2のRTC Builderを使用している場合は、変数初期化部分を修正する必要があります. (OpenRTM-aist 1.2.0では修正される予定です)
init関数内の"self._d_in"と"self._d_out"変数初期化部分を修正します. (ポート名をin,out以外に設定している場合は、self._d_XXXを設定した名前で適宜読み替えてください)

変更前

    def __init__(self, manager):
        OpenRTM_aist.DataFlowComponentBase.__init__(self, manager)
        
        in_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedString) - 4) / 2)
        self._d_in = RTC.TimedString(*in_arg)
        """
        """
        self._inIn = OpenRTM_aist.InPort("in", self._d_in)
        out_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedVelocity2D) - 4) / 2)
        self._d_out = RTC.TimedVelocity2D(*out_arg)
        """
        """
        self._outOut = OpenRTM_aist.OutPort("out", self._d_out)

変更後

    def __init__(self, manager):
        OpenRTM_aist.DataFlowComponentBase.__init__(self, manager)
        
        #in_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedString) - 4) / 2)
        #self._d_in = RTC.TimedString(*in_arg)
        #以下の行を追加
        self._d_in = RTC.TimedString(RTC.Time(0,0), "")
        """
        """
        self._inIn = OpenRTM_aist.InPort("in", self._d_in)
        
        #out_arg = [None] * ((len(RTC._d_TimedVelocity2D) - 4) / 2)
        #self._d_out = RTC.TimedVelocity2D(*out_arg)
        #以下の行を追加
        self._d_out = RTC.TimedVelocity2D(RTC.Time(0,0), RTC.Velocity2D(0.0, 0.0, 0.0))
        """
        """
        self._outOut = OpenRTM_aist.OutPort("out", self._d_out)

アクティビティ処理の実装

NameToVelocityコンポーネントの仕様に従い、入力された文字列によって速度を変換する処理を記述します.

    def onActivated(self, ec_id):
        #ロボットへの出力を初期化しておく
        self._d_out.data.vy = 0.0
        self._d_out.data.vx = 0.0
        self._d_out.data.va = 0.0
        self._outOut.write()
        
        return RTC.RTC_OK

    def onDeactivated(self, ec_id):
        #ロボットを停止する
        self._d_out.data.vy = 0.0
        self._d_out.data.vx = 0.0
        self._d_out.data.va = 0.0
        self._outOut.write()
        
        return RTC.RTC_OK

    def onExecute(self, ec_id):
        # 入力データが存在するか確認
        if self._inIn.isNew():
            # 入力データが存在する場合には、データを別変数に格納
            data = self._inIn.read()
            
            # 入力データの文字列に応じてロボットを操作する
            if data.data == "bow tie":
                self._d_out.data.vx = 0.5
            
            elif data.data == "hook":
                self._d_out.data.vx = -0.5
            
            elif data.data == "pinwheel":
                self._d_out.data.va = 0.3
            
            elif data.data == "envelope":
                self._d_out.data.va = -0.3
                
            else:
                self._d_out.data.vx = 0
                self._d_out.data.vy = 0
                self._d_out.data.va = 0
                
            self._outOut.write()
        
        return RTC.RTC_OK

NameToVelocityコンポーネントの動作確認

まず、シミュレータ上で動作確認を行います.

シミュレーター上の Raspberry Pi マウスでの確認

下記URLの「シミュレータ」を参照ください.
http://openrtm.org/openrtm/ja/node/6386

NameServiceの起動

コンポーネントの参照を登録するためのネームサービスを起動します。
「スタート」>「アプリビュー(右下矢印)」>「OpenRTM-aist 1.1.2」の順に辿り、「Start Naming Service」をクリックしてください.
※ 「Start Naming Service」をクリックしても omniNames が起動されない場合は、フルコンピュータ名が14文字以内に設定されているかを確認してください.

RT System Editorの起動

コンポーネントをGUIで操作するために「RT System Editor」を起動します.

tutorial_jsai_3_sim0.png
tutorial_jsai_3_sim0_1.png

起動するとNameServerView に先ほど起動したネームサーバーが表示されます.

tutorial_jsai_3_sim0_2.png

※もし、NameServerView にネームサーバーが表示されない時は、手動で localhost を追加します.
画像の [ネームサーバの追加] をクリックしダイアログを表示します.
localhost と入力し、[OK] をクリックして追加できます.

tutorial_jsai_3_sim1.png

NameToVelocityコンポーネントの起動

NameToVelocityコンポーネントを起動します.
作成したNameToVelocity.ファイルをダブルクリックしてください.

NameServerView上にNameToVelocityコンポーネントが表示され、Drag&Dropすれば「System Diagram」上で他のコンポーネントと接続できるようになります.

tutorial_jsai_3_sim2.png

シミュレータなど他のコンポーネントの起動と接続

ImageToObjectPrediction.py, OpenCVCameraComp.exe, CameraViewerComp.exeとRaspberryPiMouseSimulatorComp.exeも同様に起動して「System Diagram」上で接続してください.

tutorial_jsai_3_sim3.png

コンポーネントのActivate

「RT System Editor」の上部にある[All Activate] というアイコンをクリックし、全てのコンポーネントをアクティブ化します.
※下図のように、「System Diagram」上で右クリックすることでもアクティブ化できます.

tutorial_jsai_3_sim4.png

正常にアクティベートされた場合には、すべてのコンポーネントが黄緑色で表示され,動作を確認することができます.
カメラで検知した物体によって、シミュレータ上のマウスの操作ができるか確認してください.
なお、ImageToObjectPredictionのコンソールで、どのような文字列がNameToVelocityの入力となっているか確認できます.

tutorial_jsai_3_sim5.png

Activate後にNameToVelocityのソースコードを変更したい場合には、「All Deactivate」を実施した後、NameToVelocityを「Exit」してソースコードを変更してください.
再度、NameToVelocityコンポーネントを起動して接続した後、「All Activate」すれば変更した動作が確認できます.

カメラデバイスの切り替え

内臓カメラのあるPCでWebカメラをお使いの場合、内臓カメラの映像が表示されるかもしれません.
Webカメラなどに切り替えたい場合には、「Ssytem Diagram」上でOpenCVCameraCompをクリックして下図の「device_num」の値を「1」などに変更してください.
動作中に変更可能です.

tutorial_jsai_3_sim6.png

RT Systemの保存と復元

保存:RT Systemを保存する場合は System Diagram 上で右クリックして [Save As...] を選択してください.
復元:復元する場合は [Open and Restore] を選択して、先ほど保存したファイルを選択します.

実機での動作確認

電源の入れ方や注意点の記載が下記にあるので参照ください.
http://openrtm.org/openrtm/ja/node/6386 の「実機での動作確認」以降を参照ください.

コンポーネントの接続例

シミュレータの時と同様にコンポーネントを接続した後、Activateしてください.

tutorial_jsai_3_15.png

ダウンロード

最新バージョン : 2.0.1-RELESE

統計

Webサイト統計
ユーザ数:2160
プロジェクト統計
RTコンポーネント307
RTミドルウエア35
ツール22
文書・仕様書2

Choreonoid

モーションエディタ/シミュレータ

OpenHRP3

動力学シミュレータ

OpenRTP

統合開発プラットフォーム

産総研RTC集

産総研が提供するRTC集

TORK

東京オープンソースロボティクス協会

DAQ-Middleware

ネットワーク分散環境でデータ収集用ソフトウェアを容易に構築するためのソフトウェア・フレームワーク